腎臓・泌尿器疾患 川越駅徒歩1分の内科 川越中央クリニック

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埼玉県川越市脇田本町1-5 2階
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腎臓・泌尿器疾患

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腎機能障害

  • 急性腎障害(AKI):
    腎機能障害が数時間~数日で生じるもの。
  • 亜急性腎障害:
    腎機能障害が48時間以降~3カ月以内で生じるもの。
  • 慢性腎臓病(CKD):
    次の2項目のいずれかまたは両方が3カ月以上持続した場合と定義している。
    ① 尿異常、画像診断、血液・病理で腎機能障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在
    ② GFR<60mL/分/1.73m2
腎機能障害

重症度分類

慢性腎臓病(CKD)の重症度分布

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量
(mg/日)
正常 微量
アルブミン尿
顕性
アルブミン尿
尿アルブミン/Cr比
(mg/gCr)
<30 30~299 ≧300
高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、不明、その他 尿アルブミン定量
(mg/日)
正常 軽度
蛋白尿
高度
蛋白尿
尿アルブミン/Cr比
(mg/gCr)
<0.15 0.15~0.49 ≧0.50
GFR区分(mL/分/1.73m2) G1 正常または高値 ≧90
G2 正常または軽度低下 60~89
G3a 軽度~中等度低下 45~59
G3b 中等度~高度低下 30~44
G4 高度低下 15~29
G5 末期腎不全(ESKD) <15

重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価
CKDの重症度は、死亡・末期腎不全。心血管死発症のリスクを青のステージを基準に、
黄色 →薄赤 →赤 の順にステージが上昇するほどリスクは上昇。


腎機能障害原因分類

腎前性
  • 経口摂取不良、下痢、不適切な利尿薬の使用によって生じる。
  • ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の内服では、輸入細動脈が収縮することで腎前性腎障害を起こすことがある。
腎性:腎血管性
  • 腎臓の大小の血管疾患で生じる。「腎硬化症」「動脈硬化性の腎動脈狭窄」等。
腎性:糸球体性
  • 糸球体疾患には、「一次性」と「二次性」がある。
  • 糸球体腎炎において重要なのは、赤血球円柱や変形赤血球の出現である。ただし、変形赤血球は感度47%と低く、認めなくとも腎炎を除外することはできない。
  • 高度な蛋白尿を伴い、変形赤血球・赤血球円柱を認めるのであれば「腎炎」を、また高度な蛋白尿(>3.5g/日)を認め、尿沈渣の異常が軽度の場合は「ネフローゼ症候群」の鑑別を行う。

< 代表的な糸球体疾患 >

一次性
・IgA腎症
・膜性腎症
・微小変化型ネフローゼ症候群
・巣状分節性糸球体硬化症
・膜性増殖性糸球体腎炎

二次性
・糖尿病腎症
・ループス腎炎
・ANCA関連血管炎
・肝炎ウイルス関連腎症


腎性:間質性
  • 急性尿細管壊死の場合は尿沈渣では、顆粒円柱が認められる。
  • 多発性嚢胞腎を認める場合には、家族歴を確認する。
  • 薬剤による急性間質性腎炎が一般的である。尿に白血球円柱がみられる。
腎後性
  • 神経因性膀胱や前立腺肥大症による排尿障害でも、腎機能障害が生じることがある。

問診

  • 「高血圧」や「糖尿病」など、リスクになりうる疾患も確認。
  • 「感染症」「膠原病」「悪性腫瘍」「薬剤」などの原因確認。

検査

  • 腎機能障害の初期検査:血清Cr、BUN、尿定性、尿沈渣、尿蛋白定量検査(随時での尿アルブミン/Cr比、尿蛋白/Cr比)、腹部エコー(腎形態、排尿障害、体液量)、尿試験紙
  • 血清・尿蛋白電気泳動

診療チャート

タンパク尿

尿蛋白陽性

■ 試験紙法で陽性になる尿蛋白量

  • 健常成人の尿蛋白(主にアルブミン)排泄量は150 mg/日以下である。
  • 一般検査室でまず行うのは試験紙法で、尿を試験紙につけると1+~3+までが表示される。試験紙法では尿蛋白のうち大きな分子量のアルブミンしか測定できず、アルブミン排泄量が300~500 mg/日以上になって陽性となる。

■ 試験紙法で検出できない尿蛋白

  • 微量アルブミン尿(30~300 mg/日)や分子量の小さいグロブリン尿(多発性骨髄腫に伴う)の場合、試験紙法で検出できない。定量法では尿蛋白300 g/日以上あればすべて測定できる。

尿蛋白定量(尿蛋白・尿Cr比)、尿沈渣、腎機能評価

■ 尿蛋白・尿クレアチニン(Cr)比は、24時間蓄尿を行う代わりに、尿蛋白1日排泄量を見積もる簡易法として有用である。

  • 尿蛋白1+~3+は定性試験であって、尿比重が低い希釈尿の時は、低く見積もられる。定性法は腎疾患の活動性やACE阻害薬の治療効果判定として使うには不適切であり、きちんと定量蛋白(尿蛋白・尿Cr比)を測定する。

■ 尿蛋白・尿Cr比が24時間蛋白排泄量と相関しない場合

  • 尿蛋白g/1.73 m2/日.が基準になって計算されているので、尿中Cr排泄量が多くなる場合(筋肉量の多い男性、濃縮尿)では実際より1日尿蛋白量を低く見積もり、尿中Cr排泄量が少ない場合(やせている女性、希釈尿)では実際より高く見積もられる。
  • 急性腎不全ではGFR(糸球体濾過量)が急激に変化するため、簡易法での見積りは実際の尿蛋白排泄量と一致しない。

腎機能低下を伴う蛋白尿

■ Cr上昇の絶対数だけで腎機能低下を判断しない。Crの逆数(1/Cr)をとって、おおよその腎機能低下の進行を評価するのがよい。


糖尿病腎症

■ 微量アルブミン尿(30~300 mg/日)は初期の糖尿病腎症を示すだけでなく、これ自体が独立した心血管系疾患のリスクである。

■ 1型・2型糖尿病は1年に1回は微量アルブミン尿をチェックする。

■ 糖尿病腎症以外の原因を検索すべき事態は

  • 1型糖尿病では発症5年以内(平均10~15年で起こる)
  • 網膜症・神経症なし(1型糖尿病では網膜症と腎臓病は併存する。2型糖尿病では網膜症のない糖尿病腎症を10~20%認める)。
  • 腎機能の急激な悪化
  • 血尿を伴う腎症。ただし、まれだが糖尿病腎症にも血尿や細胞性円柱を認めることがある。

高血圧性腎硬化症

■ 高血庄が先行していなければならない。腎機能低下の原因が他にはない場合に疑う。蛋白尿は1g/日以下である。

■ 血圧は130/80mmHg 以下に保つ。ACE阻害薬またはARBを用いて尿蛋白は500mg/日以下を目標にする。ACE阻害薬またはARBは尿蛋白を減らし,腎機能喪失の進行を予防する。


高血圧性腎硬化症

■ 高血庄が先行していなければならない。腎機能低下の原因が他にはない場合に疑う。蛋白尿は1g/日以下である。

■ 血圧は130/80mmHg 以下に保つ。ACE阻害薬またはARBを用いて尿蛋白は500mg/日以下を目標にする。ACE阻害薬またはARBは尿蛋白を減らし,腎機能喪失の進行を予防する。


腎エコー

■ 腎機能低下全例が対象で、まず腎後性の除外(水腎症など)を行う。

■ 多嚢胞腎症(polycystic kidney disease)や腎腫瘤など、器質的腎疾患を評価できる。急性腎疾患では、逆流性腎症や急性腎不全では肥大した腎臓を、高血圧性腎硬化症では腎萎縮を認める。エコー輝度が高く腎サイズが10 cm 未満なら不可逆性腎実質疾患である可能性が高い。


ネフローゼ症候齢

成人ネフローゼ症候群の診断基準

1 尿蛋白 3.5g/日以上
2 血清アルブミン 3 g/dl以下
3 浮腫
4 脂質異常症(総コレステロール値 250 mg/d/ 以上)

注:①②は必須


■ 糸球体障害をみたらネフローゼパターンと腎炎パターンに大きく分ける。疾患ごとにどちらの臨床像が中心となるかを考える。

■ ネフローゼ症候群は血栓症のリスクである。下肢深部血栓症・肺塞栓のほか、腎静脈血栓症、脳梗塞を起こしうる。


多発性骨髄腫の腎症

■ グロブリン尿は試験紙では検出されないなめ、確定診断には尿蛋白免疫電気泳動検査を行う。

■ 腎障害は解剖学的には次のように考えられる。

1 糸球体性
2 尿細管性、または近位尿細管アシドーシス
3 間質性腎炎

フォローアップ

■ 良性一過性蛋白尿であればフォロー不要

■ 高血圧、糖尿病患者では微量アルブミン尿や蛋白尿のフォローが必要。早期からACE阻害薬・ARBで治療を開始する。

■ 微量アルブミン尿を含む蛋白尿が持続する場合には、血圧・脂質異常症コントロール・禁煙といった心血管リスクの評価と治療を行う

 

尿失禁

膀胱炎(過活動膀胱)

過活動膀胱とは

  • 過活動膀胱(overactive bladder;OAB)とは「尿意切迫感を有し、通常は頻尿および夜間領尿を伴い、切迫性尿失禁(尿意切迫感を伴い我慢できずに尿失禁を来すこと)を伴うこともあれば伴わないこともある状態」のことである。
  • 過活動膀胱の有病率は5~20%とされ、有病率は年齢とともに増加する。
1 問診・検査
  • 問診では尿意切迫感・頻尿・夜間頻尿・切迫性尿失禁の有無をまずチェックする。
  • OABの評価には質問票(過活動膀胱症状質問票,Overactive Bladder Symptom Score;OABSS)がよく用いられる。 OABSS過活動膀胱の重症度判定に右用いられ、合計スコアが5点以下を軽症、6~11点を中等症、12点以上を重症とする。
  • 尿検査により血尿や膿尿の有無を確認する。血尿の症例では尿路悪性腫瘍の可能性を考慮する。
  • 超音波検査などで残尿量が100mL未満であることを確認しておくことも必要である。
質問 症状 点数 頻度
1 朝起きた時から寝るまでに、何回くらい尿をしましたか 0 7回以下
1 8~14回
2 15回以上
2 夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか 0 0回
1 1回
2 2回
3 3回
3 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか 0 なし
1 週に1回より少ない
2 週に1回以上
3 1日1回くらい
4 1日2~4回
5 1日5回以上
4 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿を漏らすことがありましたか 0 なし
1 週に1回より少ない
2 週に1回以上
3 1日1回くらい
4 1日2~4回
5 1日5回以上
合計点数   ___点
2 治療
  • OABの薬物療法では、抗コリン薬もしくはβ3作動薬(ミラベグロン)を使用する。
  • 抗コリン薬では便秘症、口渇、眼圧上昇、霧視、認知機能障害などの有害反応が出現する可能性がある。特に、閉塞隅角緑内障の症例では、多くの抗コリン薬で投与が禁忌である。これらの有害反応の予防や治療(特に便秘症)を行うことが必要である。
  • 抗コリン薬は排尿筋の収縮力を減弱し、排尿困難の悪化や尿閉を招く危険がある。
  • ミラベグロンは、抗コリン薬に特徴的な有害反応である□渇、便秘症の発現頻度が少ないため、治療前に高度の便秘症や口渇があるような症例ではミラベグロンの使用を考慮する。
3 多尿と夜間多尿
  • 頻尿・夜間頻尿は、ほかの因子によっても引き起こされ、その一つが多尿・夜間多尿である。
  • 多尿・夜間多尿の主な原因として水分過剰摂取がある。水分過剰摂取の症例では飲水指導が必要となる。一般的には24時間尿量がおおよそ20~25mL/kg(体重50kgの症例で1,000~1,250mL)となるような飲水指導が適当と思われる。
  • 飲水過多、アルコール、カフェインは夜間多尿の因子と報告されている。
  • 夜間多尿のその他の原因としては、心不全・呼吸器疾患・腎疾患・高血圧などがあり、これら原疾患に対する治療も重要である。
  • 夜間多尿に対する薬物療法としては、昼間の利尿薬投与、三環系抗うつ薬、デスモプレシンなどがある。

過活動膀胱、腹圧性尿失禁の治療薬

◆ 抗コリン薬

・ポラキス(オキシブチニン)
・バップフォー(プロピベリン)
・デトルシトール(トルテロジン)
・トビエース(フェソテロジン)
・ベシケア(ソリフェナシン)
・ウリトス,ステーブラ(イミダフェナシン)

◆ β3作動薬

・ベタニス(ミラベグロン)

腹圧性尿失禁の治療方針

腹圧性尿失禁とは、「腹圧上昇時(急に立ち上がったとき,咳をしたときなど)に尿失禁を来す病態であり、有病率は女性の4割を超えるとされる。
腹圧性尿失禁は骨盤底筋群という尿道括約筋を含む筋肉の機能低下が原因とされ、加齢や出産を契機に出現する。

1 治療
  • 腹圧性尿失禁の原因である骨盤底筋群の機能低下は、薬物療法により改善されることはできず、治療の主体は理学療法や手術療法である。
  • しかし、βアドレナン受容体作動薬(クレンブテロール)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(デュロキセチン)などの薬物療法は、低い尿道閉鎖圧を改善させ、尿失禁が緩和されることもある。
  • 蓄尿症状(尿意切迫感・頻尿・夜同頻尿)は冬季に悪化することがある。
  • 抗コリン薬で治療効果が乏しい場合や、:抗コリン薬の有害反応が高度の場合にはβ3作動薬への変更を検討する。β3作動薬から抗コリン薬への変更も有効なことがある。

薬について

抗コリン薬
・閉塞隅角緑内障では多くの抗コリン薬が投与禁忌である
・便秘症の症例は緩下剤の併用を検討する。または便秘症の発生頻度が少ない経皮吸収型オキシブチンの投与を検討する。
・残尿量が100mL以上の場合には、さらなる精査が必要。
・認知機能障害の進行や、高度の便秘症・口渇がある場合には、β3作動薬(ミラベグロン)への変更を検討する。

1作用機序
  • 膀胱が勝手に収縮すること(不随意収縮)により、尿意切迫感や頻尿などの過活動膀胱症状が引き起こされる。膀胱の筋層はムスカリン受容体(M受容体)と呼ばれる受容体が存在しており、このムスカリン受容体に膀胱内の神経細胞より放出されたアセチルコリンが作用することで膀胱の収縮が起こる。抗コリン薬は、アセチルコリンが受容体へ作用する過程を阻害することにより膀胱の不随意収縮を抑制する。
  • 過活動膀胱の主たる治療薬である。
  • 便秘症、口渇、眼圧上昇、霧視、認知機能障害などの有害反応が出,現する可能性がある。
  • 経口オキシブチニン,プロピベリンは、20年以上にわたり頻尿症や過活動膀胱の治療に使用されてきたが、その後に出たトルテロジン,フェソテロジン,ソリフェナシン,イミダフェナシンは、膀胱への選択性が高く有害反応も軽いため、現在では多くの症例に使用されている。
  • これらの新しい抗コリン薬の臨床効果に大きな差はないとされる。
  • 高齢者では低用量から開始する。
2十分な効果が得られないとき
  • ① 投与量贈加 ②他の抗コリン薬への変更 ③β3作動薬のミラベグロンへの変更を検討する。
  • 薬物投与量を増量すると、便秘症・口渇などの有害反応の発現頻度も増加するため注意が必要である。

抗コリン薬一覧

医薬品名 経口オキシブチニン プロピベリン トルテロジン フェソテロジン ソリフェナシン イミダフェナシン 経皮吸収型オキシブチニン
商品名 ポラキス バップフォー デトルシトール トビエース ベシケア ステーブラ/ウリトス ネオキシテープ
用法および用量 通常
1回2~3mg
1日3回
通常
1回20mg
1日1~2回
通常
1回4mg
1日1回
通常
1回4mg
1日1回
通常
1回5mg
1日1回
通常
1回0.1mg
1日2回
通常
1回73.5mg
1日1回
1日最大投与量 9mg 40mg 4mg 8mg 10mg 0.4mg 73.5mg
剤形 錠剤 錠剤
細粒
カプセル 錠剤 錠剤
OD錠
錠剤
OD錠
貼付剤
血中濃度消失半減期 単回投与:
約1時間
単回投与:
約14時間
反復投与:
約11.3時間
反復投与:
約5時間
反復投与:
約50時間
単回投与:
約2.9時間
単回投与:
約15時間
下部尿路閉塞 下部尿路閉塞症状である排尿困難・尿閉は禁忌 尿閉は禁忌、排尿困難は慎重投与 尿閉は禁忌、尿閉の可能性は慎重投与 尿閉は禁忌、下部尿路閉塞の合併は慎重投与 尿閉は禁忌、下部尿路閉塞の合併は慎重投与 尿閉は禁忌、排尿困難は慎重投与 尿閉は禁忌、下部尿路閉塞の合併は慎重投与
緑内障 禁忌 慎重投与(閉塞隅角緑内障は禁忌) 閉塞隅角緑内障のみ禁忌 眼圧が調節できない閉塞隅角緑内障は禁忌。眼圧が調整できる閉塞隅角緑内障は慎重投与 閉塞隅角緑内障のみ禁忌 閉塞隅角緑内障のみ禁忌 閉塞隅角緑内障のみ禁忌
高齢者への投与 少量から投与、過量投与にならないよう注意 10mg/日より投与を開始するなど慎重投与 記載事項なし 記載事項なし 5mg/日より投与を開始し、増量に際しては慎重投与 慎重投与 慎重投与

β3作動薬:ミラベグロン

1作用機序
  • 膀胱平滑筋にはβアドレナリン受容体が存在し、蓄尿期の膀胱弛緩作用に関与する。βアドレナリン受容体には、β1,β2,β3サブタイプが存在し、ヒト膀胱の弛緩作用に関与するサブタイプはβ3受容体である。ミラベグロンは、β3受容体選択性に作用して膀胱を弛緩させることで、尿意切迫感、頻尿および切迫性尿失禁を改善する。
2ポイント
  • 抗コリン薬に特徴的な有害反応である便秘や口内乾燥感の発現頻度が少ない。
  • β作動薬のため、不整脈や頻脈などに注意が必要である。
  • 重鴛な心疾患を有する患者への投与は禁忌である。
3用法
  • ミラベグロン(ベタニスⓇ):1日1回50mgの用量で投与する。
4十分な効果が得られないとき
  • 抗コリン薬への変更を検討する。

前立腺肥大

加齢に伴う前立腺内腺(尿道周囲腺:移行領域)の腺腫様過形成であり、その原因として性ホルモンが強く関与している。


症状

初期の膀胱刺激症状から、次第に排尿障害、残尿の発生、さらには尿閉へと進む。

  • 第1病期:後部尿道や会陰部の不快感、重圧感、類尿(特に夜間類尿)、軽度の排尿困難、遷延性排尿 ※残尿はない
  • 第2病期:排尿困難、残尿発生、尿路感染、急性完全尿閉、血尿
  • 第3病期:腎機能障害、奇異性尿失禁、尿毒症(完全尿閉)

※ 前立腺肥大症の症状をより客観的に評価するために国際前立腺症状スコア(IPSS)が用いられる


■ 国際前立腺症状スコア(IPSS:international prostate symptom score)
残尿感、頻尿、尿意切迫感、夜間顕尿、尿腺途絶、尿勢低下、怒責排尿の7項目からなる。それぞれが正常から最も症状の重い6段階評価(0~5点)がなされ、その合計点によって、正常ないし軽症(0~7点)、中等症(8~19点)、重症(20~35点)に分類される。


検査

  • 超音波
  • 前立腺特異抗原(PSA:prostate specific antigen)が高値(4 ng/mL以上)であれば前立腺癌を疑う。

治療

尿流障害を解放することが最優先である

1 経過観察(無症状の場合など)
2 行動療法(生活指導、骨盤底筋訓練など)
3 薬物療法:α1遮断薬、PDE5阻害薬を基本とする。
・α1遮断薬(タムスロシン,ナフトジピジル,シロドシンなど)
・PDE5阻害薬(タダラフィル)
・5α還元酵素阻害薬(デュタステリド)
・抗アンドロゲン薬
※ 前立腺腫大が30 mL以上の場合は5α還元酵素阻害薬の併用・変更を過活動膀胱症状がある場合は抗コリン薬やβ3作動薬の併用を考慮する。
4 手術療法

国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコア

どれくらいの割合で次のような症状がありましたか 全く無い 5回に1回の割合より少ない 2回に1回の割合より少ない 5回に1回の割合くらい 2回に1回の割合より多い ほとんどいつも
この1ヵ月の間に、尿をしたあとにまだ尿が残っている感じがありましたか 0 1 2 3 4 5
この1ヵ月の間に尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがありましたか 0 1 2 3 4 5
この1ヵ月の間に、尿をしている間に尿が何度もとぎれることがありましたか 0 1 2 3 4 5
この1ヵ月の間に尿を我慢するのが難しいことがありましたか 0 1 2 3 4 5
この1ヵ月の間に、尿の勢いが弱いことがありましたか 0 1 2 3 4 5
この1ヵ月の間に、尿をし始めるためにお腹に力を入れることがありましたか 0 1 2 3 4 5
0回 1回 2回 3回 4回 5回以上
この1ヵ月の間に、夜寝てから朝起きるまでに、普通何回尿をするための起きましだか 0 1 2 3 4 5
IPSS _____点
とても満足 満足 ほぼ満足 なんともいえない やや不満 とてもいやだ
現在の尿の状況が子のまま変わらずに続くとしたら、どう思いますか 0 1 2 3 4 5
IPSS _____点

第1チャート


第2チャート

 

頻尿

頻尿

排尿回数が異常に多いこと。一般には、1日8~10回以上、就寝中2回以上
・健常人の排尿回数は、24時間で4~6回、就寝中は0~1回である。


【病態】

1 多尿…糖尿病、尿崩症など
2 膀胱の機能的容量の減少…膀胱への腫瘤圧排、膀胱・前立腺の構造的異常
3 膀胱粘膜刺激…膀胱炎、結石、異物、腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、過換気症候群
4 夜間多尿…心不全、慢性腎不全、加齢
5 精神的因子…心因性頻尿
6 その他…薬物、神経因性膀胱
  • 夜開顕尿とは、就寝中に1回以上排尿のために起きなければならないという訴えであり、そのことに困っている状態である

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