糖尿病
インスリン作用の相対的もしくは絶対的な不足のため引き起こされる糖代謝障害を示す疾患
糖尿病の疑いが強く精密検査が必要な状態
- 血液検査で血糖もしくはHbA1c高値
- 口渇、多飲、多尿、倦怠感や体重減少、視力低下などの自覚症状がある
- 肥満(BMl≧23kg/m2)で、次のリスクがある成人のすべて
•糖尿病の家族歴(一親等血縁者)
•妊娠糖尿病の診断歴のある女性
•高血圧(≧140/90mmHg)
•HDLコレステロール<35mg/dL、または中性脂肪>250mg/dL
•多嚢胞性卵巣症候群の女性
•HbAIc≧5.7%、耐糖能異常指摘歴あり
高血糖緊急症
血糖もしくはHbA1cが高い状態、また臨床症状から糖尿病が疑われたら、まず以下を確認し、高血糖緊急症(糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群)を除外する
症状 | 著明な口渇や消化器症状、など |
---|---|
身体所見 | 意識障害、血圧・脈拍の異常、異常呼吸、脱水を示唆する身体所見 |
検査所見 | 血糖・HbA1c高値、腎機能障害、電解質異常、血液ガスでアシドーシス、尿中ケトン体の出現、など |
糖尿病の診断
糖尿病診断の流れ
血糖とHbA1cの両方またはどちらかが糖尿病型 → 糖尿病と診断
どちらも糖尿病型でない → 糖尿病疑いとして3~6ヶ月以内に再検査
糖尿病型とは
- 空腹時血糖値 ≧126mg/dL
- 随時血糖値 ≧200mg/dL
- OGTT 2時間後血糖値 ≧200mg/dL
のいずれかが該当 - HbA1c ≧6.5%の場合を糖尿病型という
診断の流れ
糖尿病と診断された場合には、次に糖尿病の病型を診断する。
1型糖尿病・・・絶対的なインスリン不足、インスリン自己抗体陽性率が高い
2型糖尿病・・・インスリン分泌低下もしくはインスリン抵抗性がある。
遺伝子異常、他の疾患に併発しているもの、薬剤性、妊娠性糖尿など
次に「合併症」や「心血管系リスク」を評価する。
糖尿病の合併症
糖尿病網膜症 | 視力低下などの症状の有無。症状がなくても、診断時と年1回の眼科受診。 |
---|---|
糖尿病腎症 | 年1回は、蛋白尿・微量アルブミン尿・血清クレアチニンの検査。 |
糖尿病神経障害 | 下肢の感覚低下・疼痛、勃起不全、腹部膨満・嘔吐などの症状の有無。足の振動覚・位置覚・腱反射などの診察、足潰瘍の有無。 |
心血管系リスク
- 既往に心血管疾患の有無
- 心血管系リスク因子(高血圧、脂質異常症、喫煙、若年発症の冠動脈疾患の家族歴、アルブミン尿)の有無
治療目標
- 一般成人
・血糖値の正常化を目指す場合 HbA1c<6.0%
・合併症予防のための場合 HbA1c<7.0%
・治療強化が困難な場合 HbA1c<8.0% - 高齢者
(認知機能正常かつADL自立)
低血糖が危倶される薬剤の使用なしHbA1c <7.0%
低血糖が危倶される薬剤の使用あり、 65歳以上75歳末満 HbA1c<7.5%(下限6.5%)
75歳以上 HbA1c <8.0%(下限7.0%)
治療
- 食事療法・運動療法は基本であり、全員に行う。
- 薬物療法は、まずインスリンが必要かどうかを判断。
- 経口血糖降下薬の第一選択は、禁忌が無い場合はメトホルミンから開始
- 第二選択はDPP-4阻害薬など。心血管疾患や慢性腎臓病合併症患者では、第二選択薬としてSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬の使用を考慮。
※メトホルミンによる乳酸アシドーシスには注意
糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
脂質異常症(高脂血症)
LDLコレステロール | ≧140mg/dL | 高LDLコレステロール血症 |
---|---|---|
120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | <40mg/dL | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | ≧150mg/dL | 高トリグリセライド血症 |
non-HDLコレステロール | ≧170mg/dL | 高non-LDLコレステロール血症 |
150~169mg/dL | 境界域高non-LDLコレステロール血症 |
脂質異常症にける危険因子の評価
動脈硬化性疾患予防において、次のリスク因子は必ず確認する
- 喫煙
- 高血圧
- 糖尿病・耐糖能異常
- 脂質異常症
- 慢性腎臓病・蛋白尿
- 肥満・メタボリックシンドローム
- 高尿酸血症
- 年齢・性別、閉経
- 家族歴:早発性冠動脈疾患(第1度近親者で男性<55歳・女性<65歳))
脂質異常症改善のための生活習慣の改善
- 1禁煙
- 2食事管理
- 適切なエネルギー量・栄養素をバランスよく摂取する。
- 飽和脂肪酸・コレステロール・トランス脂肪酸を控える。
- 不飽和脂肪酸・食物繊維の摂取を増やす。
- 塩分摂取量<6g/日
- 3体重管理
- 定期的に体重測定する。
- BMl<25の適正体重を維持・減量する。
- 4運動
- 中等度(3メッツ)以上の有酸素運動
- 習慣的に毎日30分以上
- 5飲酒
- エタノール換算で25g/日以下
(日本酒1合、ビール中瓶1本、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯)
- エタノール換算で25g/日以下
管理目標
<LDL-Cの算出方法>
以下のいずれかがある場合 高リスク群となりLDL-C目標値120mg/dL以下にする。
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 非心原性脳梗塞
- 末梢動脈疾患
以下の危険因子の数を危険因子として下記の表から治療目標値を決定
- 喫煙
- 高血圧
- 低HDLコレステロール血症
- 耐糖能異常
- 早発性冠動脈疾患の家族歴
LDLコレステロール管理目標値表
性別 | 年齢 | 危険因子 | リスク分類 | LDL-C目標値 |
---|---|---|---|---|
男性 | 40~59歳 | 0個 | 低リスク | <160mg/dL |
1個 | 中リスク | <140mg/dL | ||
2個以上 | 高リスク | <120mg/dL | ||
60~74歳 | 0個 | 低リスク | <140mg/dL | |
1個 | 高リスク | <120mg/dL | ||
2個以上 | 高リスク | <120mg/dL | ||
女性 | 40~59歳 | 0個 | 低リスク | <160mg/dL |
1個 | 低リスク | <160mg/dL | ||
2個以上 | 中リスク | <140mg/dL | ||
60~74歳 | 0個 | 中リスク | <140mg/dL | |
1個 | 中リスク | <140mg/dL | ||
2個以上 | 高リスク | <120mg/dL |
薬物療法
「一次予防」冠動脈疾患を起こさないための治療
「二次予防」冠動脈疾患を再発さないための治療
LDLコレステロール低下により、「心血管イベントの抑制」「総死亡率の低下」「非心原性脳梗塞の抑制」の効果が期待できる。高リスクの場合は、以下のLDLコレステロール値を目標にする。
- 一次予防:LDL-C<120mg/dL
- ニ次予防:LDL-C<100mg/dL
※但し家族性高コレステロール血症、急性冠症候群では動脈硬化疾患のリスクが高いためLDL-Cの値を70 mg/dL未満を目標にする
薬物療法の実際
- 1高LDLコレステロール血症の第一選択薬は「スタチン系薬剤」
- ストロングスタチン:ロスバスタチン(クレストール)、アトルバスタチン(リピトール)等
- マイルドスタチン:ブラバスタチンナトリウム(メバロチン)
- 2スタチン単剤でLDL-Cを十分管理できない場合、「併用療法」を考慮する。
- スタチン+小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(工ゼチミブ〔ゼチーア〕)
- スタチン+陰イオン交換樹脂(レジン:コレスチラミン〔クエストラン〕、コレスチミド〔コレバイン〕
- 3TG≧500mg/dLの場合、「急性膵炎発症」のリスクが高いため、薬物療法も考慮する。
- 第一選択薬はフィブラート系
- 4高中性脂肪血漿の場合には、オメガ不飽和脂肪酸(魚の油)(:ロドリガ)等も使用される
※スタチンは妊婦・挙児希望者には禁忌、腎機能障害でのスタチン系とフイブラート系の併用は横紋筋融解症を誘発するために禁忌、フイブラート系は腎不全では禁忌
痛風(高尿酸血症)
高尿酸血症
高尿酸血症に対する治療は、基本的に栄養指導をはじめとする「非薬物治療」が大切であり、繰り返す痛風関節炎や痛風結節を認める場合、尿路結石の既往がある場合に、薬物療法が考慮されます。
高尿酸血症の治療指針
痛風
- 滑膜やその他の組織に尿酸結晶が沈着することで生じる関節炎。主に下肢関節に、単関節炎として生じる。第一中足趾節関節に生じることが多いが、足関節・足背関節にも生じる。羅患期間が長くなれば、ほかの膝関節や手指の関節にも生じる。
- 発作中の場合、血清尿酸値は必ずしも高値は示さないことがある。過去の血清尿酸値が重要。
- 治療は、「前兆期」にはコルヒチン、また「発作期」には発症早期のコルヒチン(例:発症12時間以内に1.0mg、その1時間後に0.5mgを投与)やNSAIDsパルス療法(非ステロイド性抗炎症薬)、経口ステロイド製剤(プレドニゾロン20~30mg/日)の内服がある。
- 痛風発作予防の尿酸目標値に関しては 痛風結節を有する場合に対しては「≦6.Omg/dL」を目標にする。
無症候性高尿酸血症
- 高尿酸血症場合には、「冠動脈疾患」や「慢性腎臓病」などの合併が多く、心血管系リスクを検討する。