40歳を超えたら要注意!働き盛りを襲うパワーダウン
最近、疲れやすい、記憶力や集中力が低下している、夜眠れないといった症状はないでしょうか。休みの日はいつも家でゴロゴロしている、休み明けは仕事へ行くのがつらい、約束をドタキャンしてしまったなど、通院するほどの“病気”でもないと誰もが思うような症状です。
更年期障害は、女性では閉経前後の数年間で起きることから、目に見える形として広く知られるようになってきましたが、男性の場合には「何となく不調」「パワー不足で」などはっきりとした変化を生じることが少ないことから、「男性には更年期障害は存在しない」とまで言われた時代もありました。このため男性は疾病だとは気付かずに、パートナーにも相談できないで一人で悩み、そのまま治療を行わずに放置して症状が進行、うつ病など他の病気を併発して悪化させてしまうこともあります。
最近では、充実したキャリアを築いてきたはずの著名な俳優やお笑い芸人に相次ぐ訃報が報道されています。社会の一線で活躍する40歳を超えてくる頃から、ホルモンバランスに変化が生じてくることから、心身に不調をきたしやすくなってきます。
特に50代60代では、加齢によるホルモン減少と同時に、職場では上と下に挟まれた管理職、家庭では子供の受験や親の介護など、ホルモンバランスに強い影響を及ぼすストレスの多い時期でもあります。
近年では、男性ホルモン“テストステロン”の加齢に伴う低下に基づく生化学的な症候群「LOH症候群:Late-onset hypogonadism syndrome(加齢男性性腺機能低下症候群)」の存在がTVの健康番組などでも取り上げられるようになってきました。
そのような男性の更年期障害も世間一般に広く知られるようになってきており、当クリニックへもお問い合わせや受診が非常に増えています。
ED(勃起障害)は健康と出世のバロメータ
男性更年期障害の初期段階で現れる典型的な症状がEDです。具体的には「夜間勃起」、いわゆる「朝立ち」が2週間に1度も無いという場合、EDの可能性も考慮に入れて医療機関を受診するのがよいとされています。
EDを自覚した場合には、早めに医師の診察を受けることが望ましいとされています。なぜなら、陰茎の動脈は非常に細いために病気の影響が現れやすく、EDの背後には生活習慣病のサインが隠れていることが多いからです。
EDは性機能の衰えだけではなく高血圧、糖尿病、高脂血症などと密接に関係していることがあります。「狭心症や心筋梗塞など心血管疾患を患った男性のうち67%で、発症の平均3年以上前にEDを自覚していた」との調査結果があります。
また、男性機能の低下は「歳だから」で片づけられてしまいがちですが、加齢に加えて生活習慣や医療的要因といった環境的な要因が関与して起こることも多く、症状が発症しますと活力の低下や脳活動の低下など、仕事を含めた社会生活にも強い影響をおよぼします。
男性ホルモンの低下と社会的成功が比例しているという研究結果もあることから、EDを自覚した場合には男性更年期障害を疑い積極的な治療をお勧めいたします。
男性更年期障害が疑われる症状
女性の更年期障害では、閉経の前後の10年間で女性ホルモンの「エストロゲン」が急激に減るのに対して、男性の更年期障害は40代頃から男性ホルモンの「テストステロン」が加齢によって徐々に低下していきます。このことから、男性は少しずつ症状が進んでいくため、身体が順応してしまい不調とは気づきにくく、また40代以降ではどの年齢でも起きる可能性があります。
男性ホルモンの減少、バランスの崩れにより、次のような症状には「男性更年期障害」としての注意が必要です。
精神、心理症状
- 健康感の減少
- 不安、いらだち
- 抑うつ
- 不眠
- 集中力や記憶力の低下
身体症状
- 筋力低下、筋肉痛
- 疲労感
- ほてり、発汗
- 頭痛、めまい、耳鳴り
- 性機能低下、朝立ちの消失
- 頻尿
性機能関連症状
- 性欲の減少
- 勃起障害
- 射精感の喪失
男性ホルモンは、筋肉や骨を強化し体毛を増やして男性らしい身体を作ります。精神を安定させて精神的なモチベーションを高め、男性機能を維持し向上を目指すのが主な働きです。
「最近なんだか体がだるい」、「調子が出ない」「疲れやすい」「仕事に集中できない」「夜眠れない」などの症状がある方は、お近くに専門外来が無い場合にはまずは内科でかかりつけの医師へご相談ください。
生活習慣を改善、テストステロンを増やす方法
生活習慣を見直すことにより、加齢により減ったテストステロンを増やすことが可能です。
◎バランスの良い食事
男性ホルモンの基本は良質なたんぱく質、肉類、魚や牛乳、卵に大豆などを積極的に取りましょう。また、よく言われるタマネギ、ねばねば系(納豆、オクラ、なめこ、山芋など)、亜鉛を含む食材(わかめ、大豆、レバー、牡蠣、うなぎなど)は男性ホルモンの分泌を促進すると言われています。
◎定期的な運動
ウォーキングや筋力トレーニングを行うことで、テストステロンの分泌が促進されます。日常生活では、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使ったり、目的地の一駅手前で降りて歩くなど、運動を取り入れるようにしましょう。
◎睡眠の質を上げる
テストステロンは夜間の睡眠中に分泌されることから、深い睡眠を取れるように工夫が必要です。寝る前に深部体温を下げるよう入浴を調整したり、部屋を暖色系の間接照明にしたり、寝る前にスマホやパソコンを使わないなどの対策が考えられます。
◎競い合い
勝ち負けのあるスポーツやゲーム等で競い合うことで自分を高め、達成感を得ることで分泌が促進されます。また趣味でも展示会等へ出展するなど、社会やコミュニティの中で自己表現ができる場所があることが大切になります。
◎ストレスを解消
過剰なストレスによりテストステロンは減少することから、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。趣味を作る、趣味仲間とのおしゃべり、好きな音楽を聴く、お風呂にゆっくりと浸かるなどがあります。
◎孤独にならない
テストステロンは「社会性ホルモン」とも呼ばれており、仲間意識や社会と繋がる気持ちが強くなります。逆に孤独でいると男性ホルモンは減少していくことから、さらに付き合いが面倒になるという下降スパイラルへ陥ってしまいます。趣味仲間を作る、馴染みの飲食店を作り孤食を避けるなどの対策が必要です。
男性更年期障害の検査・診断
診断は、問診と血液検査、その他の検査によって行われます。
- 問診
「AMS調査票(スコア)」(男性更年期質問票)というドイツで開発された17項目の問診票を使うのが一般的で、体や心の症状、性機能の低下の有無や程度を調べます。 - 血液検査
男性ホルモン(フリーテストステロン:「遊離」テストステロン)値の測定や、前立腺がん検査(PSAマーカー測定)を行います。テストステロンは日内変動があるため、午前中の採血が望ましいとされています。
一般採血検査の肝機能や腎機能など、問診によっては前立腺肥大症や前立腺がん、甲状腺疾患など多数の項目で測定を行います。 - その他検査
必要に応じて、血圧脈波検査(動脈硬化)、超音波検査(前立腺)を行うことがあります。
基礎疾患が多くある場合にはレントゲン、心電図、呼吸機能検査も行う場合があります。
血液検査で、血中の男性ホルモン「テストステロン」の量を調べます。問診でAMS>50であること、遊離テストステロンが8.5pg/ml未満であれば男性更年期障害と診断されます。
ただし、男性更年期障害はテストステロンの低値と症状の重症度が相関しないことから、数値や問診の点数だけで決まるものではなく、臨床症状が重要であることから独自の判断は禁物です。必ず医師に相談するようにしましょう。
男性更年期障害の治療
男性更年期障害は男性ホルモンが低下することで引き起こされますので、足りない分を補充することが治療の中心となります。人によっては、このホルモン補充療法と生活習慣の改善により、投与直後から症状が改善する方もいらっしゃいます。
- 1男性ホルモン補充療法
① 注射:エナルモンデポー(成分:テストステロンエナント酸エステル)
日本メーカーのあすか製薬の製品で日本承認薬であり、「男子性腺機能不全」「造精機能障害による男性不妊」「再生不良性貧血」「骨髄線維症」「腎性貧血」に対して保険適用されている注射剤です(筋肉注射)。しかし、LOH症候群(男性更年期障害)に対しては保険適用されておりませんので、自費診療となっております。② 軟膏:グローミン(成分:テストステロン)
経皮吸収剤のクリームで、陰嚢、あご下または腹部等に塗擦します。
日本メーカーの第1類医薬品です。一般医薬品であることから、健康保険適用ではありません。【副作用】
男性ホルモンの補充を長期にわたり打っていますと、次第に精巣が小さくなり精巣機能の低下を招くことから精子の数が減少してきます(男性不妊)。挙児希望の方にはお勧めできません。
・陰茎肥大
・持続勃起症
・性欲亢進
・肝機能障害(肝臓でホルモンが代謝)
・多血症(赤血球の増加)
・にきび増加
・髭などの増毛、頭皮の脱毛
・女性化乳房適切な投与量、投与間隔は個人によって差がありますので、医師の指導の下での治療が必要です。
【ホルモン補充療法ができない方】
前立腺がん、乳がんのある方は行うことができません。
睡眠時無呼吸症候群、重症の前立腺肥大症、多血症、うっ血性心不全、重度の肝腎機能障害などがある方につきましては、医師へご相談ください。- 2内服治療
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男性ホルモン値がそれほど低くない場合でホルモン補充療法が適応にはならなかったり、肝機能障害や多血症、PSAマーカー高値、睡眠時無呼吸症候群などのためにホルモン補充療法が行えない場合には、漢方薬等による治療も行われます。
・保険診療による漢方薬の処方
・男性性機能症状が強い場合にはED治療(PDE5阻害薬)
・心理症状が強い場合は抗うつ薬、抗不安薬治療
治療の効果や症状には個人差があり、短期間で終わる方もいれば年単位で治療の継続が必要な方もいらっしゃいます。早期に治療を行うことで、たいていの場合は1~2年くらいで日常生活には支障のない状態になります。
一般的には、自覚症状が落ち着いてきてホルモン量が少なくても身体が慣れてきますので、次第につらい症状は治まっていきます。経過を観察しながら、それぞれの患者様の状態に合わせて、治療を行ってまいります。
男性更年期障害外来(メンズヘルス外来)
診断は、問診と血液検査、その他の検査によって行われます。
- 初診は健康保険の適用となります。血液検査を行います。(検査は午前中が望ましいとされています)
- ホルモン補充療法については自費(健康保険適用外)となります。
- 院長が診察をいたしますので、平日(月・火・木・金 /水曜日休診)の受付時間内にお越しください。
・外来担当表
保険診療
- 初診、血液検査
- 漢方薬の処方
- 抗不安薬、抗うつ薬の処方
自費治療
- ホルモン補充療法(注射・軟膏)
エナルモンデポー(筋肉注射)1回 | 2,000円/1A(※ 1A 125mg) |
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グローミン 1本(10g) | 4,000円 |